最強の胃腸炎
私は元来胃が弱く、小学校6年生の時からほぼ毎年、胃腸炎を発症していた。中でも最強であった胃腸炎は高校1年生のときであったと記憶している。発症するのは決まって夏であり、その時期になると常に胃のことを気にかけながら生活していた。しかし、どれだけ気を遣おうと胃腸炎は無慈悲にもやってくる。その日、私はいつものように所属していたオーケストラクラブの活動に参加していた。昼食の間に胃の不快感を覚え、当時はすでに胃腸炎歴5年目であったため、これは来たな、と確信していた。不快感は数十分も経つと、はっきりとした、刺すような痛みに変わっていく。しかも、これまでに経験したどの胃腸炎よりも痛い。どうにか午後の練習にも参加したが、やがて演奏どころではなくなり、保健室へ向かうことを決心した。が、向かう間も無論、激痛が治まることはない。やっとの思いで保健室にたどり着いた私に対して向けられた言葉は「ベッドに空きがないので小学校の保健室に行ってくれ」というものであった。
私の学校は小・中・高と一貫であり、同じ敷地内に小学校もある。しかし、小学校の校舎は決して近いわけではない。そこまで歩いて行けと、そう伝えられたのだ。正直に言うなら、もうその場で寝てしまいたかった。椅子でも、なんなら床の上ででも、寝られるならどこでもよかった。けれどそう言い出す勇気も持ち合わせていなかった私は小学校へ向かうことを余儀なくされた。時期は8月、夏もど真ん中。炎天のもと、無理やり進めた足取りは酷く重かった。暑さと、情けなさと、そして何より痛みを堪えながら過ごしたあの時間は、今思い出しても違う意味で胃が痛くなる。
こんな惨憺たる結末を迎えた最強の胃腸炎であったが、原因は前日の暴飲暴食であったというのだから、恥ずかしい話である。
