感動小説 「2人の兄弟の成長」

OVERVIEW

鷹人と冬華の兄弟、幼い兄弟がお互いを大事にしながら成長していく物語


俺の名は鷹人(タカト)6歳

俺には3つ下の妹冬華(トウカ)がいる。

俺達に両親はいないんだ。父は2年前に胃癌で亡くなった。若かったから進行が早くて

見つかった時には手遅れだった。

母はまだ言葉もしゃべれない冬華と俺を抱えて泣いていたその光景だけ覚えている。

そんな母も無理をしすぎたんだろう。1人で2人を育てなくちゃならない責任感と

元々体の弱い母親はみるみる元気を失っていった。幼い俺には家のお手伝いをする以外できることがなかった。


ある日、幼稚園から帰ると冬華の鳴き声が家の中に響いていた

お母さんは風呂場で倒れていた。その床が真っ赤だった。

ただ事じゃない事だけは分かった俺は震えながら家の電話で救急車を呼んだ

駆け付けた救護隊員の人は幼い俺を見て驚いてたが泣いている冬華の声を聴いてすぐ状況を察してくれた様子だった。

母はもう息をしていなくてその場で亡くなった事が伝えられた。

騒ぎを聞きつけて心配で来てくれたお隣のおばさんが俺の代わりに色々手続きや連絡をしてくれた。俺は冬華を抱きかかえてお礼を言う事しかできなかった。

冬華は離乳食を食べ始めたばかりだけど周りの雰囲気が違うのを感じているのだろう、食べてくれないし泣くことが増えた。俺は安心させたくて必死に抱いてあやしていた。

葬儀が終わり俺と冬華は父方の祖父母の所に行くことになった。

俺は正直行きたくなかった。歓迎されてないのも分かってたから。

父祖母「冬華はまた熱だしてるの?まったく母親に似て弱くてしょうがない

お金がいくらあっても足りないわ。」

冬華は母譲りで肺が弱く病弱だった。熱を出してひどければ肺炎になって入院なんても事も多かった。だからそのたびに祖母はイライラし引き取るんじゃなかったと嘆いていた。

俺がもっと大人だったらよかったのにと何度思っただろう。

何度冬華を連れて家を出たいと思っただろうか、でもそうしても今の俺達では路頭に迷うのが目に見えていた。


だから俺は必死に勉強した。大きくなったら冬華を連れて絶対この家を出るんだ。

その為に必要なのはお金だ。そのためにはよりいい所で働けなければならない。

そのためにはそれなりの知識がいるって事も分かっていた。学校の授業の後、帰ってきて冬華の相手と家の手伝い、冬華を寝かしつけて自分の勉強ができるのは夜の9時過ぎ、そんな毎日、冬華が体調を崩し入院していれば病室に勉強道具を持ち込んで勉強した。

友達と遊ぶなんてことはできなかった。空いた時間はみな勉強に費やしていたから、だから俺には友達と呼ぶ人はいなかった。おかしな奴と思われていただろうな。

高校生になった俺。冬華は何度かの命の危険を乗り越えて中学に上がることができた。

勉強ばかりで他に取りえがない俺と病弱だけどとても気づかい優しい子に育ってくれた妹

冬華に俺はバイトをするから家に帰ってくるのが遅くなることを伝えた。この時には冬華は自分の体が弱いばかりに経済的にも祖父母に悪く思われ言われて心痛めていたから、早くバイトしてお金貯めて、家を借りる資金を作らなくては

冬華「お兄ちゃんありがとう。冬華は大丈夫だよ。いい子に待ってるから無理しないでね」

くじけそうになった時もある、その時に冬華の優しいその言葉を思い出すと自然と力が湧いてきた。

祖父母は俺が家にいる時間が減って家の事や冬華の世話が増えたと言ってくることが増えた。

家事なんて俺達がいない時やっていただろうし、世話をするのを承知で引き取ったんじゃないの?冬華は確かに体が弱くて体調を崩す事は多いけど、昔みたく言葉話せなく気づいたら高熱で入院なんてことも少なくなってきた。

季節の変わり目に身体が追い付かなくて熱を出す事はあっても、早いうちに病院に行って入院になる前に治そうとすることができた

でも祖父母には変わらなく見えるのだろう。冬華を見る眼差しは嫌悪そのものだった。

死に物狂いで3年間勉強とバイト三昧の日々、辛くなかった訳じゃないけど、おかげで家を借りられるだけのお金を貯蓄することができた。

高校を出た俺は大学ではなく都会の小さなアパレル会社に入社した。事情を話すと社長さんが良い方で近くに家を借りられる事になった。

ここへの就職が決まった時に高校受験を控えていた冬華にも伝えていたので冬華は俺の家から通える高校を選択した。

冬華が中学を卒業した次の日俺達は祖父母に礼を言って祖父母宅を出て俺の家に向かった。


冬華は大学に行かなくていいのか聞かれたけども、大学の費用を奨学金でできてものちに返さなくてはならない事や冬華の高校の学費を考えると働くのが一番だと思ったのだ。

働く会社は小さくても良い人ばかりで収入も頑張ればそれなりの額になると聞いていたから俺はその分冬華に使うお金が増えていいと安堵していた。

高校生になった冬華、反抗期で兄を毛嫌いするんじゃないんだろうかと予想していたが、以外にもそれはなく逆に俺が構わないと拗ねてしまうくらいお兄ちゃん子になってた。

冬華から言えば自分の為に一生懸命バイトして嫌な人たちのいる家から救い出してくれた

大事な唯一の家族だからと、ずっと守ってくれてた兄を嫌うなんて事ないからって笑ってた。それまでお金がなくてあげられていなかった誕生日プレゼントを今年はやっと買ってあげられる、それがたまらなく嬉しかった。何が好きだろう、何をあげたら喜んでもらえるだろうかと悩んで職場の人達にも相談した。

俺の事情を知ってくれてる同僚や先輩は率先して高校生ならこれなんてどう?おしゃれしたくなるわよねと俺なら思いつかないものまで教えてくれて助かった。

そして選んだプレゼントとこれも初めてな誕生日ケーキ

教えていなかった冬華は目を見開いて固まって、そして大粒の涙を流して喜んだ。

冬華「あ、ありがとうお兄・・・ちゃん!嬉しい、嬉しいよぉ」

プレゼントを開けてまた泣く冬華、大事にするって大声で何度も言ってくれて

一緒に泣きながら食べたケーキは涙のせいであまじょっぱかった。

けれど俺は幸せだと初めて感じた、冬華が見せる心からの笑顔を見て

諦めなくてよかったって、間違ってなかったんだって感じた

この日は忘れられない1日になった。

数年後、俺は会社で頑張りこのたび部長に昇進した。

冬華は自分も働くと言ったけど俺の分まで青春を謳歌してほしい事と

冬華には絵の才能があったからそれを生かせる仕事に就くためにも美大で学ぶ事は大きな力になるだろうと説得した。冬華も最終的には折れて俺にお願いしますと頭を下げた。

体の弱さはあっても自分で気を付けて体調崩す事も少なくなってきた冬華は自信も出てきたみたいで好きな絵をより勉強できて、同じ目標を持った仲間ができて親友ができたと喜んでいた。


そして数年後


鷹人「おめでとう!冬華!すごいすごい

今まで頑張ってきたのが報われたな」


冬華「ありがとう!お兄ちゃんや友達が応援し続けてくれたおかげだよ」


冬華の描いた絵がコンテストで最優秀作品に選ばれた

このコンテストの最優秀作品者には画家やインストラクターとしての活躍が確約されていてこのコンテストは絵の勉強やプロを目指している人にとっては目標であり、大事なコンテストなのです。

それの最優秀作品に冬華の作品が選ばれたのだ

そしてそこから冬華が描いた作品は人気でイベントや博物館から依頼があり

テレビ番組の出演と充実した日々を過ごしていた


そんなある日休日で冬華の最近描いている絵を見させてもらってたらインターフォンが鳴った。


鷹人「誰だろう?俺がでてくるよ」


俺がどなたですかと画面を見るとそこにいたのは昔引き取った祖父母の姿があった


鷹人「久しぶりですね

でもいきなりどうしたんですか?」

今頃になっていったいなんだと思ったけどリビングに上げた

冬華は自室で絵を描いているから大丈夫だろう

冬華に対する今までの誹謗中傷や態度を思えば、いい思いでなんてないんだから

座った祖父母は壁に飾られている冬華の絵を珍しそうに見ていたが

俺に何用だと言われるとニヤニヤしながら


祖父「冬華が絵の仕事だっけか 結構活躍しているそうじゃないか」


祖母「結構稼いでるそうじゃないの

今まで私たちがあんた達に使ったお金返してもらえないかしら?」


鷹人「はっ??」


こいつら何言ってんだと思った

そりゃあいきなり自分達じゃない子供を2人も引き取って育てる事になったんだ

お金的にも気持ち的にも大変だったことは今では理解できる

でもこの人たちは


鷹人「突然の事で大変だったのは分かるよ

でもあんたらは冬華をかわいがってくれたか?具合悪い時世話してくれたか?

あんたらは苦しむ冬華にひどい言葉を浴びせ、世話なんてしてくれなかったじゃないか

高校の学費だって俺が半分だしてただろ

あんたらがしてくれた事よりもあんたらが冬華を傷つけてきたことの方が大きいんだよ」


俺の言葉に祖父母は怒り顔

それでも金はかかったんだからって食い下がる

家を出ておいてよかったと思った

もし今の状態であの家にいたら俺や冬華の意志に関係なく、搾り取られていたろう


鷹人「引き取ってくれた事は感謝してる

寝床と学費を払ってくれた事も

でもあんたらは払ってくれただけだよな?

俺らに必要な金を払っただけ 世話なんてしてもらった覚えはない

してもらってたら冬華も俺ももっと勉学も健康にも苦なく過ごせたし

あんたの家を出ようなんて思わなかったよ」


祖母「だってあの時の冬華は体調崩してばっかりだったじゃないか

医療費だってかかってるのよ

その時の恩はないの?恩返しにお金恵んでくれたってバチは当たらないでしょ

よこしなさいよ」


図々しい

さすがにイライラしていると後ろから声がした


冬華「あなた方に渡すお金なんてありません

私を育ててくれたのはお兄ちゃんです

具合悪い私にすぐ気づいて病院に連れて行ってくれたのも看病してくれたのも

私の学費を払ってくれるためにバイト遅くまでして頑張ってくれたのもお兄ちゃんです

あなた方はお兄ちゃんがお金出せるようになった途端お金出さなくなりましたよね

私が今こうして活躍できるようになったのはお兄ちゃんです

あなた達には関係ありません」


今まで聞いたことない冷たい声に俺も驚いた

冬華の冷たい目線と言葉に祖父母はぐちぐち言いながらも帰って行った


鷹人「冬華気にする事ないからな

ありがとうな俺の事そう思ってくれて

俺は冬華が妹でよかったよ」


俺がそう言うと冬華は今度は満面の笑顔で


冬華「私の方こそ

私が体弱かったせいでお兄ちゃんには小さい頃から嫌な事言われたり辛い想いさせちゃって、それがずっと申し訳ないって思ってたんだ

だから今自分の仕事でお兄ちゃんに喜んでもらえてとっても嬉しいの」


冬華も冬華で苦しんでたんだ

でもその苦悩を乗り越えて今の冬華は活き活きとしている

俺はそれをこれからもそばで支えて行こうと思う










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